体全体を保護材のように覆う「筋膜」の動きが悪くなると、体の思わぬところに影響を与える場合があります。痛みを感じるのが一部分でも、体全体を覆っている筋膜をリリースする(解きほぐす)ことで、根本的な解消につなげてみませんか。

【筋膜リリースとは】
全身の筋膜の硬直・ねじれ・ゆがみを解きほぐすストレッチです。
筋肉を一定方向に伸ばす通常のストレッチに対して、筋膜リリースは筋繊維のねじれを多方向に解放します。
筋膜の伸張性や柔軟性を回復させ、筋肉活動のバランスを整えることが期待できます。
【筋膜リリースの効果】
筋肉自体の動きが良くなることに加え、筋肉へのスムーズな血液循環を回復させることができます。
筋膜の癒着を原因とした体への負担を取り除くことで慢性的な痛みの緩和、運動機能の改善も促します。
【筋膜はどの部分?】
筋肉の表面を覆う薄い膜(結合組織)で、筋膜の強度と形を構成するコラーゲン繊維(膠原繊維)と、形態記憶と伸張性を与えるエラスチン繊維(弾性繊維)からできています。
皮膚直下で筋肉を大きくくるむ浅筋膜(せんきんまく)、筋肉の中でそれぞれの筋細胞をくるむ深筋膜(しんきんまく)に分けることができ、全身の筋肉・臓器は何かしらの筋膜で覆われていることになります。
参考:カイロジャーナル、Dr. KASE THERAPY、筋肉・筋膜の構造と役割
【筋膜の役割】
筋膜は皮膚と筋肉の間に位置し、外部の衝撃から筋肉を保護する緩衝材のような働きをします。
筋膜が正しく機能しているときは柔らかく弾力があり、筋繊維をくるむことで筋肉自体の出力を上げたり、骨や内臓を保護・形成したりするなどその働きはさまざまです。
筋膜をケアすることで、筋肉や内臓への負担を減らすことが期待できるため、深いダメージを負う前に対処することができます。
【筋膜が固くなる(癒着する)とき】
筋膜は使いすぎても、動かさなくても硬くなってしまいます。
収縮して筋膜自体が硬くなるだけでなく、筋肉と筋膜間の組織液(ヒアルロン酸)が不足することで筋膜が硬くなってしまい、筋肉との癒着につながります。
体が硬くなった…と思うのは筋膜が硬くなっているのかもしれません。思い当たる原因はありませんか?
- 長時間同じ姿勢を取っている
- ゆがんだ姿勢になっている・負荷が均等にかかっていない
- 特定の筋肉のみを使っている
- 運動不足
- ストレス
- 怪我・故障・ダメージの蓄積
- 休息・栄養・水分不足
【癒着によって起きやすい症状】
筋膜と筋肉が癒着することで、筋肉への負荷が強くなってしまうと、さまざまな不調が起こる可能性があります。
慢性疼痛・しびれ・筋力低下など直接的に筋肉に起こる症状だけではなく、疲労蓄積、回復力の低下、自律神経への影響などさまざまです。
癒着している部位をほかの部分でカバーするために広範囲わたって痛みが出る場合もあります。
【筋膜リリースの方法】
痛いと思うところまでやる必要はありません。気持ちよく行える範囲で行います。
ゆっくり伸ばすことを念頭に置いて行うと、体のバランスが修復しやすくなるでしょう。
【自分でできる筋膜リリース】
椅子に座った状態でお尻と座面が離れないようにします。
手足を同時にさまざまな方向へ90秒ずつ伸ばしてみましょう。
不安定になるようなら片手・片足ずつでもいいですし、背もたれを使用してもかまいません。セット数などにとらわれず、気になったときに取り入れてみることをおすすめします。
【ツールを使った筋膜リリース】
ローラーやポール、テニスボール・ゴルフボールなどリリースしたい部位に合わせ、ツールを使うことも非常に効果的です。
ほぐしにくい部分はツールを使ってみましょう。
●足裏(足底筋膜炎防止に)
立った状態のまま片足でボールを踏み、上から圧をかけながら足裏でコロコロ転がすようにほぐします。反対の足も同様に行います。転ばないように、手を壁につくなどして行いましょう。
●太ももの内側(内転筋をほぐす)】
うつぶせになり、片足を真横に90度に曲げます。ローラーやポールを、曲げた方の太ももの下に入れコロコロ転がします。体は床と平行になるようにして、ポールにしっかり体重をかけて行いましょう。
【筋膜リリースで運動パフォーマンスもアップ】
運動のパフォーマンスを上げるために筋肉を鍛えるなど、筋肉に気を使うかたは多いでしょう。
筋肉や体を十分使えるようになるためにも、定期的に筋膜リリースを心がけてみましょう。筋膜のねじれが取れ、体が伸びやかになることを感じられるはずです。
姿勢も良くなり、筋膜の下の筋肉の動きもよくなるとよりパフォーマンスを上げることも期待できます。
フォームローラーの選び方
次に、フォームローラーの選び方を見ていきましょう。フォームローラーとひと口に言っても、サイズや形状、素材などが違います。最大の効果を求めるなら、自分に最も合ったタイプを見つけるのが近道ですね。
用途に合わせてサイズを選ぶ
まずはフォームローラーの大きさを選びます。大きく分けて二つの選び方があります。
「長さ30cm」のモデルが汎用性が高い
フォームローラーのオーソドックスなタイプは、長さ30cmのものです。取り回しやすいサイズ感なので、肩甲骨やふくらはぎ、太ももなどに使用する際にスムーズに行えます。持ち運びもしやすく、部屋に置いても邪魔になりにくいでしょう。
エクササイズ目的ならロングタイプを選ぶ
筋膜リリースのためだけでなく、エクササイズにも役立てたい人は上半身をカバーできるロングタイプ(60cm~65cm)がおすすめです。持ち運びは難しく、部屋の保管スペースも取るので、よく検討してから購入することをおすすめします。
フォームローラーの素材・硬さをチェック
クッション性があり柔らかい素材として、ウレタン素材やポリエチレン素材などがあります。硬質PVCやEVAなどは、比較的硬めの素材です。
初心者なら、柔らかい素材と凹凸の数が少ないローラーを選ぶといいでしょう。だが、それでは物足りない人には、硬めの素材や凹凸の数が多めのタイプを選ぶことをおすすめします。
安全に使うために耐荷重も確認しよう
フォームローラーを使った筋膜リリースやストレッチをする際は、体重を預けることになります。そのため、体重をしっかり支えるだけの耐荷重が確保されたフォームローラーを選ぶとよいでしょう。
具体的には、体重の1.5~2倍程度の耐荷重が確保された製品を選べば、ストレッチなどに使っても長く使えるでしょう。
効果が異なる「ボールタイプ」や「電動タイプ」も検討しよう
フォームローラーには、オーソドックスな円柱タイプのほかに、ボールの形をしたタイプもあります。ボールタイプは足裏などをピンポイントに狙う際に適しており、円柱タイプより小回りが効きます。


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