
等尺性収縮の仕組み
筋肉は力学的なエネルギーを発揮するためのものです。
しかし、役割はそれだけでしょうか。
例えば前回投稿の運動のため(動力として)の筋肉についてで説明した等尺性収縮を考えてみましょう。
等尺性収縮では筋の長さは変わりません。
実際に何かモノを動かすという力学的エネルギーを発揮しようとする場合、その過程で等尺性収縮も行われますが、その時モノは動いていないときにあたります。
持ち上げられないほどの重さの荷物を持ち上げようとするとき、関節は動かないので筋肉の長さは変わりません。
しかし、筋肉には力が入っています。この状態を等尺性収縮と言います。
ではこの状態のとき、筋肉は力学的エネルギーを発揮していないので、エネルギーの消費もしていないのでしょうか?
そんなことはありません。
エネルギーを一切消費しないということは永遠にその行為が続けられるということになります。
重い荷物をずっと持ち上げようとし続けられるでしょうか?
それは不可能です。
ではこの状態のとき、どのようにして筋肉はエネルギーを消費しているのでしょうか?
熱生産
答えは「熱」です。
等尺性収縮の状態にある際の筋肉は、力学的エネルギーの発揮はゼロですが、代わりに「熱」という形でエネルギーを発散しています。
つまり、筋肉には以下の2つの役割があります。
- 力学的エネルギーを発揮する
- 熱を生産する
これら2つの合計が筋肉のエネルギー消費量の総量になるのです。
筋肉は収縮すると同時に必ず熱が発生します。
そしてその熱は、筋肉にどれくらいの負荷をかけて動かすかによって発生する大きさが変わります。
運動と熱生産
では、力学的エネルギーも熱生産も高く、消費エネルギーの大きな運動とはどのようなものでしょうか。
一見、重いダンベルを持ったり、筋肉に負荷をしっかりかけて運動した方が、エネルギー消費につながるように見えますが、実は間違っています。
実際は、軽いダンベルで筋肉への負荷を軽くし、たくさん速いスピードで運動する方が、全体のエネルギー消費は大きくなるのです。
例としてエアロビクスなどの有酸素運動があげられます。
エアロビクスは筋肉への負荷が軽いですが、たくさん素早く動きますよね。
そのため、消費エネルギーが高く、ダイエットに向いているとされているのです。
実際の消費カロリーは、運動強度(METs)、体重、運動時間、そして係数(1.05)を掛け合わせて計算できます。消費カロリー(kcal)=METs × 体重(kg)× 時間(h)× 1.05.
これを筋トレに置き換えてかなりざっくりわかりやすくすると
ベンチプレス100kgを5回挙げる場合
ベンチプレス(運動強度)×100kg(体重)×5回(時間)×1.05
ベンチプレス50kgを20回挙げる場合
ベンチプレス(運動強度)×50kg(体重)×20回(時間)×1.05
この2つで比べるとベンチプレスという運動強度と1.05は同じなので、それ以外で比べると
100×5=500
50×20=1000
このように数値に差が出ます。
高い運動強度で一瞬だけ頑張るよりも、軽い運動強度でたくさん動いたほうが
力学的エネルギー消費は大きくなるということですね。
熱生産の割合
それでは、エネルギー消費全体の何割くらいが熱になるのでしょうか。
実は、具体的な数値はまだ解明されていないのですが、最も力学的エネルギーを発揮できた場合でもそれは全体エネルギーの30~40%ほどの割合であると言われています。
つまり、残りの60%以上は熱となってしまうのです。
いかがでしたか。
熱生産について知ることで、なぜ運動中には体温が上がるのか、筋肉のエネルギー消費について詳しく知ることができましたね。
次の投稿では運動単位について解説します。


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